第2回 昆虫から学ぶ、失敗の上手な受けとめ方
【 この物語の概要 】
昆虫は動物の75%を占めている、地球上でもっとも繁栄している種類です。
昆虫はどのようにして、それだけの繁栄をしたのでしょう?
この物語は、“会議のコンサルティング”を仕事にしている齊藤が、
ある日、ふらりと立ち寄った昆虫館でのお話です。
昆虫館の館長は、蟻田さんという巨大なサムライアリです。
【 前回のあらすじ 】
蟻田さんから、ハキリアリは800万匹の大群で、組織的に
キノコ栽培をしているという話を聞かせられました。
トヨタ自動車でさえ、30万人の社員です。
ハキリアリはどのようにして、巨大な組織を作ったのでしょう?
【 本編 】
蟻田 「虫が大繁栄をしてた理由は、体を小さくして、
脳を持たないようにしたからだな」
齊藤 「昆虫って、脳みそ無いんですか?!」
蟻田 「ない!」
齊藤 「何で脳がないのに、繁栄できるのですか?」
蟻田 「脳があれば繁栄できると思い込んでいるのが人間のおごりじゃ」
蟻田 「拙者らは、考える脳を持たない分、刺激に敏感にしたのでござる」
「嫌な刺激があれば逃げるし、良い刺激があれば近寄る」
「超シンプルな行動をする事が繁栄の秘訣でござった」
「人間は確かに頭が良い」
「だから、車や飛行機を発明できたのだ。 それは認めるが・・・」
齊藤 「が?」
蟻田 「頭が良すぎて、ややこしい事ばかりをしておる」
「嫉妬やうらみなどの感情が、しょっちゅう人の行動を
狂わせておるではないか」
「気づけば、環境汚染や核兵器などで、自分で自分の首を絞めておる」
「はたして、人間はどれだけ高度な生き物なのかな?」
齊藤 「うわー、なんか、蟻田さんって、メッチャいじわるな方っすね」
「同じ地球で生きているんですから、もっと仲良くしましょうよ~」
蟻田 「だーかーらー、拙者達昆虫は、人間にそんな言い方をされる程、
デキが悪くないのじゃ」
齊藤 「どーいう意味ですか?」
蟻田 「同じ地球に生きていると言っても、これまで生きてきた長さが
全く違うのじゃ」
「拙者達が生きてきた歴史を24時間だとすると、お主ら人間は、
まだ15分程度しか生きておらん」
齊藤 「ええ!昆虫はそんなに先輩なんスか!!」
蟻田 「さよう。恐竜だって、絶滅したとはいえ、14時間も生きておった」
「繰り返すようだが、人間はまだ、たった15分しか生きておらんのに、
早くも絶滅の危機だ」
「果たして、これが優れた生き物と言えるのかな?」
齊藤 「・・・そんな見方があるんですね」
「蟻田さん達昆虫から見て、どうすれば僕ら人間は、
もっと幸せに生きられるようになるんですか?」
蟻田 「うーん、たくさんありすぎて、どこから言えばいいのかもわからん」
「じゃが、『もっと幸せに生きられるようになりたい』と、
願い過ぎない方がいいであろう」
齊藤 「え、じゃあ『もっと不幸になりたい!』と考えるんですか?」
蟻田 「違う!」
「要は、無駄な事を考え過ぎるなという事でござる」
「オリンピックで金を取った人のインタビューでよく聞かぬか?」
「『絶対、金メダルを取ろうと思ってました!』というコメントを」
齊藤 「聞きます、聞きます。やっぱり、自分を信じる事って大事ですよね!」
蟻田 「それが違うのでござる」
「オリンピックに出ている者は、全員、『自分は金を取る!』
と、信じておるじゃろう」
「だから誰が勝っても、『絶対、金メダルを取ろうと思ってました!』
と、同じ事を言うのでござる」
齊藤 「『金メダルを取ろう』と思っても、とれない人が
山のようにいるわけですもんね」
蟻田 「さよう、金メダルは一人しか取れないからな」
「人間は、『勝った人の言葉がすべて』になりがちなので、
正しくない事も正しくなってしまう事があるのでござる」
齊藤 「む~、何となくわかるようなわからないような・・・」
「仮にそうだとしたら、どうしたらいいのですか?」
蟻田 「簡単な事だ。 できる事を、黙々とやればいい」
齊藤 「つまり、考えるなと・・・」
蟻田 「何も考えないというのはできないでござろう」
「じゃから、『“不要な部分”は考えるな』という事でござる」
「何かの目標を達成させたいと思ったら、具体的に何をするべきかを考え、
それを実行すれば良い」
「『信じれば達成できる!』などとは考えない方がよいという事じゃ」
「ただ、『これをやれば道が拓けるかも』と、思う事を
やるだけでいいのじゃ」
「『これをやれば必ず達成できる!』と、強く考えれば考える程、
その一方で、『できなかったらどうしよう・・・』と思ってしまい、
結局一歩も動けない人間が多いのではないか?」
「拙者ら昆虫の、3億年に渡る歴史を見ていると、頑張ってもうまくい
かない時はうまくいかん」
「地球に隕石が落ちるなど、予測のできない事も起こる」
「どんな事でも神様でない限り、結果については予測ができんのじゃ」
「拙者ら昆虫から言わせてもらえれば、行動だけが重要であって、
行動しながら信じる事など全く意味がない!」
齊藤 「でも人間は、なかなかそこまで淡々とは行動できないっすよー」
蟻田 「うむ、別に『このままいけば私は成功できる!』と、信じるのは
勝手じゃ。信じたければ勝手に信じればよかろう」
「ただ、信じて事が動くなら世話がないのでございる」
齊藤 「思えば私も大学生の時、物理の試験前に『試験に通りますように!』
と、真剣に祈りましたが、あっさり単位落としましたね」
「追試の時は、祈るのをやめて、出題される箇所を勉強したら、
ちゃんと点数が取れましたから」
蟻田 「さよう。 いくら願いを込めようが、祈ろうが、行動をしないと、
お主の目の前にあるゼリーひとつ動かせまい」
「確かにいくら祈っても、ゼリーすら動かないですよね。
手で動かせば簡単なのに・・・」
蟻田 「うむ。 でも拙者から見ると、人間は『信じる事』に頼って
行動をしない」
「自分が『この方法でいいと思う』と感じたものは、『絶対、成功
させる!』とか、『失敗するかも・・・』という感情は捨てて、
黙々とやってみればいいのでござる」
「うまくいかなかったのは、その人の能力がなかったわけではなく、
やり方を間違えているだけでござる」
「だから、間違っているのが分かったら、『あっ、このやり方は
違うんだ。じゃあ違うやり方でやろう』と考えればいいのでござる」
「人間は複雑すぎるがゆえ、失敗した時、『あー、俺には能力がないんだ』とか、
やってみる前から『やって無駄だったらどうしよう』など、無駄な事を考えるのに
時間を使い、結局何もしない」
「失敗したら、失敗した原因の箇所を直せばよい。
実にシンプルであろう?」
齊藤 「昆虫の視点はものすごく独特ですね。
わかるようなわからないような・・・」
「結局まとめると、何を伝えたいのですか?」
蟻田 「行動をして失敗をしたら、失敗した箇所を直せばよい」
齊藤 「いくら、『成功してみせる!』と、思って取り組んでも、
失敗する時は、失敗しますもんね」
蟻田 「そう、失敗したからと言って、『私はダメな人間だ!』と、
自信をなくす事ほど、もったいない事はない」
「神様でもない限り、そうそううまくいかぬわ」
「失敗したら、失敗した箇所を直せばよいだけの事。
シンプルでござろう?」
齊藤 「シンプルですが、失敗はやはりショックですよ」
「蟻田さんのように、そこまで気持ちを割り切れる自信がないです」
蟻田 「お主ら人間の中にも、割り切りが上手な者もおったぞ」
齊藤 「誰っすか?」
蟻田 「ケンタッキーおじさんじゃ」
「ケンタッキーおじさんは、無名で貧乏だった時期、自分があみだした
フライドチキンの作り方を、飲食店に売り込みをしていたのでござる」
齊藤 「はぁ・・・」
蟻田 「で、断られる事断れる事、それこそ失敗の連続でござった」
「ケンタッキーおじさんがあみだした、フライドチキンの作り方が
初めて売れたのは、何と1010軒目」
齊藤 「じゃあ、1009回も失敗したんですか!」
蟻田 「さよう。1009回の失敗と、1010回目の成功でござる」
「1009回の失敗の間、いつもの白いスーツをヨレヨレにさせ、
車で寝泊まりをしながらセールスをしていたでござる」
齊藤 「普通、失敗って10回もしたらあきらめますよね・・・」
蟻田 「ケンタッキーおじさんは、失敗をした箇所を少しずつ
改良していったでござる」
「ケンタッキーおじさんが、『次は売れる!』と、強く期待し過ぎたら、
失敗した時に失望感が大きくなり、途中であきらめてしまったでござろう」
「ちょっと先をとらえた未来に関しては、『自分のやる事はきっと
うまくいくだろう』と、思うのは大事でござる」
「しかし、1回1回の挑戦については、『失敗したら直せばいいや』
程度に考えるのが昆虫式でござる」
齊藤 「なるほど、さすがに昆虫! 非常に割り切ってますね」
蟻田 「さぁーて、お主に見せたい次の虫は・・・」
齊藤 「え、まだあるんスか?」
蟻田 「なに?帰ると申すか?」
「なら、首をはねて、胴体だけ帰してやろう」
齊藤 「わかりました。見ます、見ます」
- 次回につづく -


