第1回 アリが作る巨大会社とは?

この物語は、“会議のコンサルティング”を仕事にしている齊藤が、ある日、
ふらりと立ち寄った昆虫館でのお話です。


齊藤 「いやー、今日も一日仕事をした」

   「いつものラーメン屋にでも寄って帰るかな」

   「ん、東京京橋昆虫館?」

   「いつも、ここのラーメン食べに来てたのに、
    隣に昆虫館があるなんて気づかなかった」

   「入り口は2階か。ちょっと、行ってみるか・・・」


      - 2階へ -


齊藤 「入り口にベルがある。これを鳴らすのかな?」


     - チリン チリン -


男  「ただいま参る!しばし待たれよ!」


齊藤 (すごい言葉遣いの人だな・・・)


男 「おまたせ申した」


齊藤 「うわっ、でっかいアリ!」


男  「いかにも、拙者はここの館長をしておるアリでござる」


齊藤 「アリの館長?」

    「そんな館長いるんスか?」


男  「ここにおるではないか」


齊藤 「はぁ・・・」

    「それと、何で武士の言葉なんですか?」


男  「見てわからぬか?」


齊藤 「ああ、その鋭いアゴ、まさか・・・」


男  「いかにも! 拙者はサムライアリの蟻田と申す」


齊藤 「そうですか、では失礼します・・・」


蟻田 「待たれよ!」


齊藤 「いや、放してください!私はたまたま迷い込んだだけなんですよ。
    何も見ていないし、何も聞いていないので、もう帰してください~」


蟻田 「まぁ、落ち着かれよ」

   「せっかくここまで来たのだから、少し見ていかれるがよい」

   「そうでないと、刀よりも鋭い拙者の大アゴで・・・」


齊藤 「わかりました!見ていきますから放してください」


蟻田 「まずは、拙者の話を聞くのがよろしかろう」

   「菓子でも食わぬか?」


齊藤 「ああ、ありがとうございます」

   「ゼリーですね」


蟻田 「うむ、栄養満点でござる」


齊藤 (これ、“カブトムシ用ゼリー”って書いてある・・・) (-_-;)


蟻田 「今日は、我らアリ一族のコレクションを用意した」

   「拙者らのサムライアリ、クロオオアリ、ハキリアリ、グンタイアリ、
    ムネアカオオアリ、コツノアリ、ウロコアリ、トゲアリ、クロクサアリ・・・」


齊藤 「ちょっ、ちょっと、どこまで出てくるんですか?」


蟻田 「まだまだ出るぞ。拙者らアリ一族は大家族なのだ」
  
   「お主らほ乳類は、何種類くらいいるか知っておるか?」


齊藤 「えー、イヌ、ネコ、ヒツジ・・・。えーと・・・」


蟻田 「えーい!そのペースでは1週間かかってしまうわ!」

    「お主らほ乳類は、地球上に約5千種おる」

    「一方、我々アリ一族は、約8千種もおる!」


齊藤 「アリだけで、そんなに種類がいるんですか!」


蟻田 「さよう。 そして何と、昆虫全体では、現在100万種が
    確認されている」

    「地球の全動物のうち、75%は拙者ら昆虫でござる!」


齊藤 「えー、そうなんですか!」


蟻田 「お主ら人間は、人間が一番繁栄していると思っているようだが、
     それは全くの勘違い」

    「地球は、昆虫の星なのだ」


齊藤 「完全に納得はできないですが、とにかくすごく繁栄しているんですね」


蟻田 「何か含みのある表現であるな? 申してみよ」


齊藤 「昆虫がたくさんいると言っても、ただいるだけのような
     気がするんですけど・・・」


蟻田 「お主のような人間は、一度、拙者の大アゴで斬られる必要があるな」


齊藤 「ちょっ、待って待って、ごめんなさい!」


蟻田 「お主は昆虫の事を何も知らん」

    「だから、拙者らのように繁栄できぬのじゃ」


齊藤 「人間が、昆虫から学ぶ生き方ってあるんですか?」


蟻田 「大アリじゃ!」

    「大きいアリという意味ではないぞ」


齊藤 「ええ、わかっておりますが・・・」


    ― 気まずい沈黙 ―


蟻田 「・・・ゴホン」

   「ところで、お主ら人間社会の中で、大会社と呼ばれるとこは、
    どこでござるか?」


齊藤 「日本だとトヨタ自動車とか大きいですね」


蟻田 「何人いるのじゃ?」


齊藤 「トヨタは大きいですよ!30万人くらいいますから!」
    (2008年4月の連結データ)


蟻田 「それっぽっちか」


齊藤 「は?30万人ですよ」

   「ちゃんと数わかります?」


蟻田 「わかっておるわ! 拙者らアリ一族の中には、ハキリアリ族がおる」

    「ハキリアリ族は、ひとつの巣に800万匹おる」


齊藤 「800万!よく組織を保っていられますね・・・」

    「でも、ただたむろっているだけっスよね?」


    「トヨタは、自動車を作ったり生産活動をしていますから、
     アリとだいぶ違うと思います」


蟻田 「浅はかな知識よ・・・」

    「ハキリアリは、みなで農業をしておるのじゃ」


齊藤 「農業?」


蟻田 「さよう、まず、みなで葉っぱを切り取る」

    「そして切り取った葉は肥料にして、キノコを栽培しておるのじゃ」

    「キノコを栽培するために、護衛役、葉を切り取る役、葉を粉砕する役、葉を
     キノコにふりかける役、など、職務もそれぞれあるしっかりとした組織なのだ」


齊藤 「すっごい高度じゃないですか!」


蟻田 「だから言うておろう。人間よりも拙者達の方が繁栄しておると」

   「人間が繁栄している理由は、脳を発達させたおかげで
    科学技術を持てたことだな」


齊藤 「そーですね。 じゃ虫は、どうして繁栄できたんですか?」


    - 第2話はこちらです -