第37回 鰾から学ぶ『辛い体験のとらえ方』とは?
【 この物語の概要 】
昆虫は動物の75%を占めている、地球上でもっとも繁栄している生き物です。
昆虫はどのようにして、それだけの繁栄をしたのでしょう?
昆虫繁栄の仕組みを、『人間の生き方にどう活かすか?』を、
おもしろ楽しく紹介しています。
この物語は、“会議のコンサルティング”を仕事にしている齊藤が、
ある日、ふらりと立ち寄った昆虫館でのお話です。
昆虫館の館長は、蟻田さんという巨大なサムライアリです。
【 本編はここからです 】
齊藤 「こんにちは~」
蟻田 「手みやげは?」
齊藤 「私の笑顔という事で・・・」
蟻田 「帰れ!」 (#`Д´)
齊藤 「いやー、ちょっと疲れてしまいまして」
蟻田 「お主に毎回付き合わされる、拙者の方が疲れるでござる」
齊藤 「そんな冷たい事、言わないでくださいよー
「私は昔から運が悪くて・・・」
「気づくと犬のフンを踏んでいたり、気づくとマグロ船に乗せられたりなど、
次々と信じられない事が起きるんです」
蟻田 「それはそれは」
齊藤 「全然聞いてないっすね!?」
蟻田 「やかましい! 拙者は今、標本を作っておるのじゃ!」
齊藤 「標本?」
蟻田 「ほれ、アジの断面標本でござる」
「これをホルマリンに漬ければ完成でござる」
↓ アジ ( 全長24.5cm )

齊藤 「何で、アジの標本なんて作っているんです?」
蟻田 「暑いので、気分だけでも涼しくならんかと思い、今回は魚を展示するのじゃ」
「ほれ、あそこにも標本があるじゃろ?」
齊藤 「何ですか? あのデカイ魚」 (-_-;)
蟻田 「世界最大の淡水魚のひとつ、ピラルクじゃ」
↓ ピラルクの標本 ( いおワールド かごしま水族館様 にて撮影 )

(全長2.5m)
齊藤 「ど、どこの川にこんなデカイのが泳いでいるんですか?」
蟻田 「アマゾン川じゃな」
「ウロコは非常に固いので、現地では、靴べらにも使っておるぞ」
「この魚、一説には、4mにもなるらしい」
蟻田 「ところで、『鰾』という字は読めるでござるか?」
齊藤 「見た事ない漢字です」
蟻田 「この魚の中にある器官でござる」

齊藤 「うーん、エラですか?」
蟻田 「エラは、鰓と書くでござる」
齊藤 「ヒレ?」
蟻田 「ヒレは鰭と書くでござる」
「『鰾』は、ウキブクロと読むでござる」
↓ 緑の丸がウキブクロです

齊藤 「へぇ!一生使わない漢字でしょうね」
蟻田 「ちなみに、ウキブクロは、全ての魚が持っているわけではござらん」
齊藤 「ふーん」
蟻田 「何じゃ? その気のない返事は」
齊藤 「だって、地味そうな話なんですもん」
蟻田 「何を言う! かなり『ヘェ!』な話でござるぞ」
「ウキブクロの成り立ちを聞いて驚くのじゃ!」
「古代の海には、ウキブクロのある魚はおらんかった」
「当時、強い魚の代表としては、サメの仲間でござった」
齊藤 「サメは今でも強いですよ」
蟻田 「いや、今のサメは昔ほど強くない」
「昔の海は、サメの仲間が占める割合がもっと多かったと言われておる」
齊藤 「へぇ~」
蟻田 「サメがもっと強かったその頃、アジやイワシのご先祖は、
サメに追いまくられた」
「追われた先は、サメの入れない沼地でござった」
「沼地はサメが入ってこないのはいいのじゃが、
水が少ないので酸欠になる事もしばしばあったでござる」
齊藤 「どっちも地獄ですね」
蟻田 「酸欠を克服するために、アジやイワシのご先祖様は、肺を作ったでござる」
「この肺のある魚がさらに進化し、陸に上がる生物が出てきたでござる」
齊藤 「おおー、そこから人間に続くんですね」
蟻田 「さよう」
「しかし、この陸に上がる競争にも負けた、アジやイワシの先祖もおる」
「陸に上がる競争に負けたアジやイワシの先祖は、
再びサメのいる海へ押し出されるのじゃ」
齊藤 「もう、踏んだり蹴ったりですね」
蟻田 「海に押し出されたアジやイワシの先祖は、
最初の頃、サメにバクバク食べられた」
「サメにとっては、回転寿司状態でござる」
齊藤 「か、かわいそう・・・」 (´Д`。)
蟻田 「しかし、アジやイワシの先祖も負けてはおらん」
「沼地での生活時代に獲得した“肺”を、ウキブクロに進化させたでござる」
齊藤 「へぇ!ウキブクロって、元々、肺だったんですか!!」
蟻田 「さようでござる」
「ウキブクロには2つの役目がある」
「ひとつは、パッドの役目」
「ウキブクロがパッドになるおかげで、魚はきれいな流線型を保っておる」
「だから早く泳げるのじゃ」
齊藤 「それによって、サメが追いつけなくなったのですね」
蟻田 「うむ」
「さて、ウキブクロの役目のふたつ目、それは浮力の調整じゃ」
「ウキブクロのおかげで、上下の動きも速くなったでござる」
齊藤 「なるほど、サメは攻撃力があっても、
機動力で負けるようになってしまったのですね」
蟻田 「うむ。アジやイワシの先祖は、負けっぱなしの人生でござったが、
思いがけない所で、肺が役にたったのじゃ」
「お主は最初、『マグロ船に乗せられていた』とかボヤいておったが、
それは、“肺を持った魚”と同じではないか?」
齊藤 「たしかに・・・」
「自分にとって辛い体験は、後で、意外な強みになったりするんですね」
蟻田 「いつまでもボヤいておっても何も始まらん」
「辛い体験があるから、得られるものも多いのではないか?」
「お主だって、マグロ船の話は、研修でのツカミのネタになっておるではないか」
齊藤 「よ、よくごぞんじで・・・」 (-_-;)
蟻田 「野口英世なんかも、マイナスの体験をバネにした偉人ではないか?」
齊藤 「ヤケドした手の事で、相当いじめられたみたいですもんね」
蟻田 「そのくやしい体験をバネにして、千円札になる位の医学者となったでござる」
「事実を言えば、野口英世が発見したと言われるほとんどのものは、
現在では間違いである事がわかっておる」
「それでもなお、英雄であり続けられるのは、過去の辛い経験が、
多くの日本人に共感を生んだからかもしれぬ」
齊藤 「『ホームレス中学生』が大ヒットした、お笑いの田村さんも
その一人かもしれませんね」
蟻田 「うむ。マイナスの経験こそ、後年役に立つものはない」
「そういうわけで、拙者も本マグロの大トロが食べたいので、
もう一回マグロ船に乗ってきてくれんかの」
齊藤 「絶対イヤです!」 (#`Д´)
【 作成者 】
志縁塾 講師 齊藤 正明 (会議コンサルタント)
大学卒業後、水産分野の研究開発に従事。
その研究所は、所長の無理な指示で2割くらいの
社員が会社を休む環境であった。
齊藤自身も、マグロの鮮度保持剤を開発している時、
所長から、「お前は一度、マグロのすべてを知ってこい」
と言われ、マグロの遠洋漁業に出され、その後、
うつ状態で休職。
個人の能力が発揮できるよう、対等な話し合いの場を
作るため会議術(ファシリテーション)を学び、
独自の方法を開発。
現在、会議コンサルタントして活躍。
趣味の昆虫採集と、コミュニケーション術を併せた
コラム、東京京橋昆虫館物語を、ここに連載中。
ファシリテーター齊藤正明の公式サイトは、
ここから見られます。
【 近日行うセミナー 】
志縁塾で、近日行うセミナーについて、ご紹介いたします。
よろしければいらしてください。
①7月 9日(水) 19:00~21:00
会議術セミナー
②7月23日(水) 19:00~21:00
昆虫などから学ぶ、人生をよりラクに生きるコツ
③8月24日(日) 10:30~14:30
【NPO企画】齊藤正明プロデュース!
大谷由里子と昆虫にふれよう!【 夏の昆虫採集 】


