第4回 乳房は生えてこない。

乳癌になって真っ先に思うことは、がんの怖さよりも乳房を失うのではないかという恐怖感です。

胃は手術しても2年経てば再生します。しかし乳房はとったら最後、生えてはきません。
女性の象徴である乳房、これを失うことは女性としてのアイデンティティーの一部を欠したような感覚に陥ります。年齢によってもこの感覚は変わってきますが、私が接した50代から下の患者さん達で乳房切除の手術方法をとった方は、それぞれ乳房を失ったことでの肉体的精神的ハンディを背負っております。


「温泉に友達から誘われているのだけれども、どうもこの胸では入る勇気がなくて断っている。」

「手術から5年経ってもお風呂場の鏡に自分の体を映すとまざまざと現実をつきつけられる。」

私の執刀医は「乳房を失うことは患者の大いなる精神的な負担であって、だから温存で患部が取れない患者さんに対しては、同時再建手術を勧めている。」とのことでした。

 私は前回の記述の通り、セカンドオピニオンで“抗癌剤を先に使用し患部縮小したら温存手術”か、

“最初から乳房の中味をすべて取り出しそこへ広背筋を入れる同時再建手術”のどちらかを選択手段があったので、結果同時再建手術を選びました。

 術後の乳房ですが確かに見た目よくわかりません。温泉にも人の眼を気になりつつもまずまず普通に入ります。ただ本人はサイズが元の形とは違い、小さくなってしまったことがわかっているのです。それでさえ少し気に病んだりするぐらいですから、乳房を切除した方の気持ちはこの気持ちを上回る以上の、私としても計り知れないものであると思います。

 初回乳癌の際、入院時に再建手術のみで入院された40代後半の女性がいらっしゃいました。

彼女は、市内の他の病院で5年前乳癌と宣告され乳房切除しかないといわれそこで手術を受けたとのことでした。

その後抗癌剤もせず転移もなく通常の生活をしていたのですが、温泉などにやはり他の方々と入れないし人工パットを繰り返し使っていることが負担なため、再建手術をすることにしたとのことです。

彼女は、まず固くなった全摘の皮を伸ばすための手術を一回して、その後その中に広背筋を入れる手術をもう一回するという二度の手術を行っていました。

私には「この病院は10年前からあったのよね。最初から知っていれば、一回ですべてが済んでこんな二度手間三度手間もかからないのにね。」とおっしゃってました。

現在は乳癌の分野は日進月歩でかなり技術が進んでおり、全国的に温存手術を行う率も高くなっておりますが、病院や地域によって差があることは確かです。

たまたま私は運良く同時再建手術を執刀できる医師に出会えたのですが、その技術を持っている乳腺専門の外科医がいない地域もあります。

(1)温存と乳房切除の詳細が書かれております。
http://www.nyugan.jp/treat/index.html

(2)乳房の再建手術に関して個人のサイトで詳細に書かれております。
http://www8.ocn.ne.jp/~r-petal/

追記:ちなみに私の同時再建手術は一回の手術で2時間半で済みました。で、各サイトにも様々な再建手術の方法や写真が掲載されているのですが、私の手術方法は当時の主治医が独自に開発した手術方法であるので同じ広背筋を使用していても見た目もかなり違うものであります。